鋳
鍛
彫
漆
箔
房
心・技
各部の名称
image 源氏重代の大鎧に範をとる武久の前立は、木彫りの龍。材は姫小松(ひめこまつ)である。

近頃は良質の木が手に入りにくくなったと嘆じながらも、龍を彫る彫刻師の手元は確か。脇に置かれた刀の数、およそ百本。
その一本一本が研ぎ澄まされ、鋭い光を放っているのはその昔日本刀を魂とみたてた武士の気脈に通じるものがある。

image よき彫刻師はよき研師、この世界でいわれるこの言葉は、研ぎが満足にできなければ、完璧な彫りはできないことを教える。

なるほど、何カ所かを彫る度に刀が研がれる。
この鋭い切先があってはじめて、あの跳梁たる龍が生まれるのである。研三年彫十年がこの世界の最低修業単位である。

image 彫りあがった龍をみる。

反り返った鱗の一枚一枚、手足にからみつく雲、いまにも炎を吹き上げんばかりの舌、まざまざとみせつける彫刻師の腕の冴え。 この龍に水晶の玉を抱かせ、銅の髭が付けられると、箔押師の手に移る。 ここで金箔を施され金色に輝く龍となって、燦然と、武久の兜に鎮座するのである。
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